今後システム開発は委任契約にすべし

システム開発というと請け負い開発が一般的かも知れませんが、これが動かないシステムやトラブルのもとであると考えています。このために、この業界は3kやら7kと呼ばれ、お客様にも感謝されず、不毛な徹夜仕事が続いていると思います。システム開発の請負契約には以下の問題点があります。

  1. 完成物が誰も分からないのに、納期と金額が決まる
  2. 開発側と発注側で完成物のイメージが異なる
  3. 発注側が完成物を正しく定義できない

これがために、開発側は仕様策定支援を行う訳ですが、これでも拾いきれず、納期や金額をオーバーしてしまいます。請負の場合は、納期までに定められた品を納めその対価としてお金をもらう契約です。問題は定められた品が定められていないことで、定めたとしてもビジネスの変化や顧客の都合、物を観てからの心変わりで定めた物が変わっていくのです。もうそろそろ発注者も開発者も新しいお互いがWIN-WINになるような関係を広めるべきではないでしょうか。
Webと基幹のシステムを同等には出来ないと思いますが、成功発展してきているシステムは永遠のβのシステムです。Googleがこのモデルを採用しています。常に機能修正、追加を繰り返すモデルです。納期のないスパイラルモデルと言えるでしょう。一方請負開発は納期と金額がはじめに決まるので、ウォーターフォールモデルになりがちです。これは建築業を参考にしているものと思いますが、納期、金額、ウォーターフォールが負の循環になっているように思います。特に一度デスマーチなプロジェクトに陥ると次のプロジェクトにも影響が出て、ずっとデスマーチになりそういった業界体質になってきているものと考えています。
これを解決するためには、

  1. 顧客とともに完成物を小さな単位で固める
  2. 小さな単位で製造を行う
  3. 小さな単位で検収を行う

といった作業が必要と思います。完成物を固める作業は、半分顧客マターなので、期限を区切ることが出来ません。固まった完成物を持って初めて見積もりが可能となるので、最初に全体金額が出ません。従ってこれらは本来顧客が考え、顧客が作り出す物を手伝い、製造していく作業に他なりません。これが委任契約の発想に繋がります。委任契約になった場合、成果物ではなくそのプロセスで対価が発生します。すると以下のような状況が起きてきます。

  1. 開発側はより時間をかけ、より多くの機能を、より高度な機能を実装しようと意識する
  2. 発注側はより短期間に、出来るだけ必要最小限の機能でビジネスを遂行したいと考える

今までの請け負い開発の場合は

  1. 開発側はより安く、より簡単に作れるようにし、納期を守り、利益を上げる
  2. 発注側はより多くの機能を、納期内にのせるように仕様変更、追加をしていく

といった関係にあり、お互い、マイナスに働いていましたが、委任にすることにより、両者の思いが逆転し、WIN-WINに働くのではと考えています。最終的にはこの方法の方が安上がりであると漠然と考えていますが、まずはシステム開発には納期がないこと、システム開発の費用は常に発生していくことを発注者側が意識していく必要があると考えます。
システム開発は建築業にあらず、ガーデニングに近い物であると考えます。常にいい物を育てていく、そういった職人を見つけ、委任で対価を支払えるような会社のシステムは大きく発展していくと思います。大規模システムや基幹システムには適用できないと考える人もいるかも知れません。でもインターネットアーカイブを観ると
1996年のYahoo.comはhttp://web.archive.org/web/19961228024612/http://www4.yahoo.com/
現在のYahoo.comhttp://www.yahoo.com/
とこれだけ成長してきているのです。他の大きなシステムも同様に成長していくシステムでやれるように思うのです。Linuxを筆頭にオープンソースも日々進歩しています。なぜ企業のシステムだけが日々進歩しない、決められた機能なのかということを疑問に思うのです。
委任という形態が広まり、おおくのシステムが日々進歩し、お客様のビジネスが加速し、感謝される。そんな業界を目指したいのです。誰もが憧れ誇りを持てる業界にしたいのです。
作業支援という名目で常駐でお客様のもとで指示を受け働くこともコミュニケーションの上では重要かも知れませんが、自分の会社で誇りを持って仕事をできる業界であってほしいと思います。人を集め企業に割り振る手配師だけが特をする業界であっては行けないと思うのです。人を集め常駐させることも一つの才能かも知れませんが、システム開発の才能ではないと思うのです。システム開発は創造的でわくわくするような仕事だと思います。そういった創造性が発揮できる業界になってほしいと思っています。