硫黄島戦生き残り元海軍中尉の証言

色々知らなかったことが書いてありました。まず予備学生とい制度があって、海軍兵学校に行かなくても将校になれたと言うのです。なった本人も大変ですが、その部下になる人も大変だったと思います。また硫黄島の兵士の多くは赤紙一枚で呼ばれた応召兵であり、40-50代の人々が多かったと記述されています。すなわち妻子ある普通のおちゃんがあの島で戦って死んでいったのだと考えられます。また海軍と陸軍のメンタリティーの違いについても触れられています。海軍の証言者から見た栗林中将は世間一般で言われているよりも威張っているようなイメージがあったようです。
本書で分かることは、アメリカ以外に、島の灼熱の気候、水、飢えと飢えたもの同士のいざこざなど、極限の状態での敵はいたるところにあったようです。当たり前のように人が死んでいく世界、実感を持って想像することはできません。
特に証言者が語る、アメリカの最終的な攻めである、水攻め。水攻めをするときはアメリカ兵は事前に警告するそうです。その中で日本兵は水が飲めると喜んだそうです。その後、送り込まれるのは大量の海水。海水で壕を満たすとその上にガソリンを撒き、火をつけるそうです。想像を絶する生き地獄が展開されていたようです。
多くの普通のおちゃんたちは軍事訓練もそこそこに、祖国に残した妻子を守るために死んでいきました。
硫黄島は海底火山の上が海面に出た全周18km程度の小さな島です。日本の英霊はまだ1万人ほど戻っていません。何年かかろうが英霊を全て戻さなければならないと感じた読後でした。