副題は「なぜ10年前の35歳より年収が200万円も低いのか」

なかなか衝撃的な本でした。私は高学歴ワーキングプアのくちなので、まぁ飢え死にしないで研究できればよしとしようと思っていた方ですが、普通に働いている人もなかなか大変なのですね。

10年前と言えば2000年頃、このころも97年の山一證券の破綻など景気は悪かったような気がします。確かにITバブル等はありましたが世相は暗かったような。35歳というとおそらく社会人になったのが、95,96年ごろでしょう。就職難の中を頑張って生きて、10年経ったら200万円減とは報われません。

この10年好景気は何度かあったわけですが、着実に35歳世代は貧しくなってきたということでしょう。35歳世代は団塊Jr.世代ですのでボリュームゾーンで目立つのかもしれませんが、現在の25歳世代が35歳世代になったときに状況が良くなっているかというとむしろ悪くなっているように思います。そうすると、35歳世代以下の人々は皆、報われない世代と言う事になります。

デフレの影響で200万円収入が下がったという考え方もできると思いますが、その上の世代の年功序列賃金を守るために35歳世代にしわ寄せが行ったとも考えられます。日本は「親父」の雇用を極力守ることにより、今の家族の崩壊を防いできたのかもしれません。そのため、将来の家族を持つ世代にしわ寄せが行っていると考えられます。

そうして守った「親父」世代が続々と定年し、年金生活に入ります。恐ろしいことに子供の出生より、65歳人口が増える割合が多いのです。この人達は国民年金で平均5-6万円程度、厚生年金で16万円程度、企業年金も入れるとJALなどの放送を見ていると40万円以上月にもらうようです。

もちろん一部は積み立ててきた部分もあろうかと思いますが、JAL企業年金など年率4.5%前提という実態と合わない規定であったようです。そんな年金は貰う人は当然積み立てた自分のカネと思っていて、納める方は「世代間の助け合い」「相互補助」と言われて自分は収めています。

そして、新卒の人の手取りより、いや収入より、おやじの年金の方が多い事態が生まれている。働いている人の収入より、働かない人の収入の方が多いのは、私にはブラックジョークにしか思えない。

本書の帯には「収入が伸びない、仕事が見つからない、結婚できない、子供をもてない・・・」と書かれている。本書は35歳世代に対する丁寧なインタビューとアンケート、海外事例から構成されている。最後には提言が書かれているが、その提言が実行されるかは分からない。

もしも本当に年金が「世代間の助け合い」というのであるならば、困っている世代に年金を払うべきではないのではないか。その意味では子ども手当は子供に対する年金であると考えることもできよう。決してバラマキとは言えないのではないだろうか。

いつか行く道と思い皆黙っているのかもしれないが、高齢の人を敬うそんな時代にはもう遠い過去なのかもしれない。