副題は「終身雇用の幻想」

課長立場にというものに全く興味がなかったのでスルーしてましたが、城さんの「若者はなぜ3年で辞めるのか?」の続編で、筆者の最終回答とのことです。

本書は物語風に進みます。ホチキス止めのような簡単な軽作業しかさせてもらえない一郎。非正規雇用です。彼はいいます「能力で給料に差がつくのは当然だ。でもそもそも難しい仕事を任せてもらえなければそもそも競争にならないじゃないか」
その弟、二郎は正社員になります、「仕事にやりがいとか充実感を求めちゃいけないんだな」と思いながら。
二人産んだらあとが無い(会社にいられなくなる)花子も出てきます。
一生ひらの40代健一も出てきますし、仕事のない窓際部長も出てきます。
ありそうな光景が続きます。末は博士かフリーターかと、普通に考えたらブラックジョークのような日常が描画されます。

筆者は日本は階級社会であると言います。これは面白い視点だと思いました。皆が自分たちを守るために、格差が固定し階級化してきたのです。一億総中流社会という時代から階級社会までに20年ちょっと。格差社会ではなく階級社会。格差ならば諦めなければ少しは格差を埋められそうですが、階級は全て横でやり取りするので、縦の流れがなくなります。

なるほど、昨日友達の結婚式で箱根に行きましたが、結構賑わっていました。週末箱根で過ごせる階級と、家でひきこもる階級。2000円の天丼を食べる階級、500円の天丼を食べる階級。

格差社会でたまにでもささやかな贅沢が出来る状態であればよかったのですが、階級社会ではそういったものも減っていくのかもしれません。

国家公務員や大企業の社員、定年を迎えた団塊の世代は、底辺の階級(若者)から見たら貴族階級なのかもしれません。階級は固定されています。GDPが増えていかない限り、若者が年を取っても、今の子供達が年を取っても、底辺階級のままでしょう。

今の日本がフランス革命前夜のフランスとダブってきました。

搾取される若者が取っている作戦は合法非合法は問わず、以下のとおりです。

  1. ひきこもり作戦(働かなければ誰からも搾取されない)
  2. オレオレ詐欺作戦(非合法な世代間の所得移転)
  3. 非婚、少子化(人工の逆ピラミッドを加速させリセットを早める)

個々人は自分たちの都合で動いていると思いますが、合理的な戦略であるとも言えます。国債が国民の資産を超える日まで遠くありません。それまでもっといろいろなことが起きてくるでしょう。

話がそれましたが、本書は日本の階級を定義した意味で名書と言えます。