なぜビルは完成し、システム開発は失敗するのか?

「プロジェクトの失敗は要求に起因することが多い」と要求に関する話から本書は始まります。ソフトウェア工学が要求は確定していること、を前提にしているので要求がぶれる場合は前提条件が変わり、プロジェクトは失敗するという話です。ではこの要求をどのように正しく獲得すればいいのかを記述したのが本書です。有用で面白い無いようですが、工学的な体系ではなく、筆者の持つノウハウを記述した感じがします。要するにシステムも分かる、お客さんとはなせる、問題の把握もできると全人格的な人物でなければならないと述べているので、それはそれでそんな人がいればプロジェクトは失敗しないかもしれません。確かにプロジェクトの成功はPM次第と言う感覚はありますが、プロジェクトの成功失敗が属人化してしまうのは受注側発注側ともに経営的にはよくないと思うのです。
後半は知識労働者とはとい話が書かれています。こちらはコンピュータを使っていると知識労働者と見られるけど、この業界肉体労働だよねという話が続きます。筆者は現場に近い人のようでこれは面白く読みました。
そのプロジェクトを救う銀の弾丸は無いのかもしれませんが、プロジェクトに関する体系は作れる訳でそれがPMPなどにまとまってきているのだと思います。結局、失敗から学び成功の体系を形作る必要があり、それが出来る人、会社、組織が生き残って行くのだと思います。ダーウィンの進化論で有名な言葉で『この世に生き残る生物は、最も強いものではなく、最も知性の高いものでもなく、最も変化に対応できるものである』があります。失敗から学び、体系付け成功へ向けて変化することができることが必要なのだと思います。それに必要なのは時間です。建築は紀元前の遥か昔から成功と失敗を蓄積しているのに対し、システム開発はわずか4−50年。COBOLなどで作る基幹系のシステム開発の成功手段がJavaやインターネットの出現で通用しなくなり、新しいノウハウを蓄積してきたこの10年間と言えます。
技術は進歩しますが、インターネットやオブジェクト指向を使った開発がどの辺で失敗するかというのはだいぶノウハウがたまってきたと思います。