なかなか理解されない高学歴ワーキングプア問題

水月昭道氏の著。新書にも関らず、あとがきを読んで不覚にも涙した。就職に関するハウツー本という見方もできる本書の最後は「合掌」で終わる。仏道の人のようなので当然な話なのかも知れないが、なぜ、合掌で終わるのか、筆者は社会的、あるいは実際に死んでいった博士たちを多く見ているからかも知れない。

それだけ事態は深刻かつ、彼らが壮年期に達し始めた今、緊急を要するのであろう。それでも彼らに生き延びて欲しいという筆者の熱い思いが伝わってくる。

第一章ではなぜ、高学歴ワーキングプア問題が起きているのかを説明している。大学の授業は多くの非常勤(バイトみたいなもの)の講師によって支えられている話、それは1千万円を超える教授などの正規雇用者を守るための手段として不安定な非常勤を多く利用している。彼らの多くは任期つきである。どこかで見た構図である。基本的には製造業派遣と同じ構図である。さらに悲惨なのは彼らは将来的な専任を目指すので、とりあえず我慢して生きられればいいと、まさに霞を食うように生きている。

そんな彼らに第二章から、専任になるためのハウツーを述べている。そこに書かれている話は、自分を売り込む営業活動である。就職活動を行ったわけでも正社員になった経験があるわけで、営業したことがあるわけでもない、彼らに論文の実績を積み上げる無意味さを説く。意外と新鮮に思う博士の方もいるかも知れない。営業は数をどのくらいこなすかであり、いかに相手に思い出しても貰うかが重要である。覚えてもらうのでなく思い出してもらうことが一番大事であり、そのためのハウツーが書かれている。だから、本書のこのハウツーには、いい研究をしているか、論文が多いかなどは出てこない。冷徹にいかに専任の座を掴むかが書かれている。

筆者はいい研究、優秀な研究者が専任につけない状況を本当は変えたいと思っているが、まず若手が専任にならないと変わらないことも知っている。だから冷徹にハウツーに徹している。

専任になれるかなれないかは、募集する人にたまたま思い出してもらえるかに掛かっている。公募で公平に選ばれていると思っている人は少ないであろう。

そして専任を目指すあまり、博士が「利己」になっていると筆者は嘆く、そして博士に「利他」の精神を求める。
そして真実を見つめる博士の活躍を筆者は切に願う。

経済成長をしなければ、キャパは増えないので、キャパの奪い合いになる。高学歴ワーキングプアの問題も基本的に同じである。このまま進めは世代間の戦争に突入するかも知れない。

民主党さんへ、僕は内定取り消しになりました。 - それマグで!
「丸山眞男」をひっぱたきたい
http://blog.goo.ne.jp/ikedanobuo/e/efda3403cd51b3f94af6cb3c8731802a

たくさんの年金を貰って、働きもせず、山や海外旅行に行っている。いい服を着て遊んでいる。そんな高齢者も多くいる。今まで納めた年金だからもらえて当然と思っている。団塊の世代も何とか逃げ切りたいと思っている。そのしわ寄せは今の若い世代、子どもたちの世代に引き継がれる。若者は簡単に切り捨てられ、高齢者は定年延長や高齢者雇用月間など手厚く保護される。

高齢者は弱者で、お金もないというイメージはもはや捨てなければならない。全ての高齢者が弱者だと思わされているだけである。お金を持っている。経済的な人脈も若者より多いいであろう。オレオレ詐欺の平成20年度の被害額は、約300億円である。累計でなく年間である。「どうしてそうなった」である。詐欺は許されるべきでは無い犯罪であるが、なけなしのお金を振り込んだ人もいるであろう、しかい無い袖は振れないのだから、それだけそこにお金があるということである。

http://www.police-ch.jp/news/2009/01/004076.php

もう、高齢者に若者が声を大にして幸せに生きる権利を言ってもいいのではないだろうか。研究しない教授に若くて優秀な人がいるからあなたは必要ありませんといってもいいのではないだろうか。

長年生きてきた権力者は強いかも知れない。しかし政権が変わって少しルールが変わったように、ルールは変えられるのである。明日から若者雇用月間と山の手線に広告を張り出すことも出来るはずである。博士は真実を見つめ、自己の研究のみで満足せず、その博識を元に新しいルールを作るために動き出すべきであると思った。