日本のITコストはなぜ高いのか?

日本のITコストはなぜ高いのかという本です。その原因を保守契約にあるとする本です。保守契約とは本書でも述べられているように、システムに関する保険に近い意味合いがあります。システム維持に関するサポート費用と考えることも出来ます。
システム開発は最近ではレガシーになってきたものも多くありますが、最新技術を適用するため、失敗リスクが高くなります。大規模システム開発の50%程度は問題を抱えます。問題は下記の3つに分けることができます。1)納期の問題、2)コストの問題、3)品質の問題。これら3点は相反する問題で同時には解決できないのです。どれかを守ろうとすると他の2つが高くなる関係にあります。従って、プロジェクトは何もしなければ失敗への圧力が働くことになります。このためPMPなどのマネージメント技術が発展してきました。
日本の場合、この3つの問題のうち、JUASの調査でも明らかなのですが品質を優先させています。そのため、要件不足やスキル不足などで想定物が納品でき無い場合は、ドキュメント等を含め何とか納期を遅らせるという方法が取られます。納期が遅れると人件費の固定費が嵩みますのでコストが高くなります。契約の問題からこのコストはたとえクライアントの要求ミスであり、仕様変更や追加に原因があったとしても、ベンダーが持つことになります。
従ってベンダーは常に赤字になる大きなリスクの中で、システム開発を行っています。現場では血みどろの戦いが日々繰り返され、システムが開発されていきます。その後、システムが稼動し始めると保守というフェーズに入ります。ベンダーは経営的にも人員の精神的にも保守フェーズで少し落ち着くのです。システムが安定稼動すれば保守フェースは何もしなくてもお金になる財布になるのです。
本書の筆者は保守が不当に高いと嘆いており、保守のコストはシステムを安定稼動できないベンダーの瑕疵によるものが大きいと述べ、システム監査により保守料金を下げようとという考えを主張しています。
確かに、市場価格の10倍もの保守費用を取っているベンダーも知っているので、この点に問題があることは間違いはありません。しかし、人員の確保や資料の保全など保守のための固定的なコストが発生していることも事実です。
クラインとベンダーは相互もたれあうのではなく、適切な利益とサービスの元に「戦略的ビジネスパートナー」としてお互いの信頼を培っていくことが必要かと思います。